アナログカメラ好きな人でもリバーサルフィルムを使っている人はほとんどいませんよね。
当たり前だけど、普通はプリント目的なので使うフィルムはカラーネガやモノクロネガ。
その上、デジタルカメラが普及するにつれて、フィルムは姿を消していったのでリバーサルフィルムを売っている店も本当に少なくなりました。
今回、リバーサルフィルムを取り上げた理由はクローゼットの片づけをしていたら多量の期限切れリバーサルフィルムを発見したから。
パッケージを見た瞬間、カメラマンアシスタントになりたての頃を思い出しました。
あの頃はデジタルカメラがプロの世界でも使われ始めていましたが、まだ性能がそれほど良くなかったのでアナログカメラも併用されていてリバーサルフィルムが普通に使われていました。
リバーサルフィルムといっても実はたくさん種類があって被写体によってを使い分けていたんですよ。
メーカーやそれぞれのフィルムには特徴があって、それを仕事に合わせて上手に選ぶこともカメラマンにとって大事なことだったんですよね。
リバーサルフィルムとは
まずリバーサルフィルムとは何かと言うと簡単に説明すると「現像する時に反転現像をしてポジ画像をえる写真フィルム」のことです。
みなさんがよく使うネガフィルムは現像した後、フィルムをみても何が写っているかよくわからないはずです。
リバーサルフィルムは写っているものがそのままフィルムで表現されていて、主な使用用途としてはスライドや商業印刷に使われてました。
設計上、プリントには向かず露出を合わせるのが非常に難しいということで、知識と技術のある人しか使いこなせないため一般の方は使う事がないフィルムでした。
富士フイルムのリバーサルフィルム
フジクローム Velvia【RVP】
ISO感度50のデーライトフィルム。
屋外やスタジオ撮影なら良いのですが室内撮影で絞らないといけない場合は感度が低いため光量が足りず苦労しました。
そのデメリットがあっても優れた粒状性と非常に鮮やかな色再現性は他のフィルムでは代用できないため風景や料理の撮影ではマストと言ってもいいフィルムでした。
今なら、インスタ映えするフイルムって感じですね。
フジクローム ASTIA【RAP】
このフィルムはISO感度100のデーライトフィルムです。
このフィルムの特徴は優しい肌色の表現力と自然な色再現力。
柔らかいトーンでポートレートに向いています。
当時、メインで作品撮りをしていた機材がCONTAXのRTSⅡ+レンズがPlanar T*50mm F1.4という組み合わせ。
そのカメラにASTIAをつめて、ポートレートを撮るとすごく透明感のある写真が撮れるんですよね。
その雰囲気が大好きでした。
いつか復刻されたらRTSⅡで撮影に行きたいですね。
フジクローム PROVIA【RDPⅢ】
このフィルムはISO感度100のデーライトフィルムです。
とても扱いやすいフィルムでニュートラルな色再現性とバランスのとれた階調で使用範囲の広いフィルムですね。
特に意図がない通常の撮影ではPROVIA一択でした。
増感にもよく耐えてくれて露出不足の時は何度も助けてもらいました。
フジクローム MS100/1000【RMS】
このフィルムはISO100から1000まで増感現像で対応します。
通常、1絞り以上の増感をするとカラーバランスが崩れたり色再現性が著しく落ちるのですが、3絞りちょっと増感にも対応できるよう設計されています。
これはスゴイことなんですがフィルムを知らないとよくわからないと思うので簡単に説明しますね。
デジタルカメラだったら設定で感度を変えれますがフィルムではそうはいかないんですよ。
35mmなら36枚撮り終わるまで変えられないから、フィルムをつめるときにISO100なのかISO400で撮影するのか決めておかないといけないです。
でも、このフィルムは露出を3絞りちょっと変える事ができるので撮影の状況に合わせて感度を決める事ができるというアドバンテージがあるわけです。
ISO1000まで対応できるのでスポーツ撮影で多く使われました。
フジクローム 64T TypeⅡ【RTPⅡ】
ISO64のタングステンフィルム。
タングステンライトというライトに色温度などが最適化されています。
タングステンライトというのは暖色系の光をもつ定常光です。
ストロボと違い、定常光は見たまま写るので商品撮影でよく使われました。
ストロボと比べタングステンライトは光が弱い為、長時間露光してもカラーバランスや色再現性が落ちないよう設計され、低感度のフィルムということで滑らかなグラデーションを表現することが可能でした。
長時間露光に強いので、深い被写界深度が必要な撮影にも使われる事が多かったですね。
コダックのリバーサルフィルム
エクタクローム E100S
ISO感度100のデーライトフィルムです。
フジクロームのラインナップだとPROVIAにあたります。
エクタクロームはフジクロームと比べると全体的に少し黄色にふってましたね。
このフィルムはナチュラルでニュートラルな色再現性があり、シャープネスが高いため、はっきりとした印象を与えながらナチュラルな表現ができます。
その為、ポートレートによく使われました。
エクタクローム E100VS
ISO感度100のデーライトフィルムです。
フジクロームのラインナップだとVelviaにあたります。
このフィルムは当時、最高レベルのシャープネス、高い色飽和度を誇っていました。
その為、鮮やかな色の表現に優れていて、Velviaと同じように花の写真などでよく使われていましたね。
エクタクローム EPY
ISO感度64のタングステンフィルムです。
フジクロームのラインナップだと64T TypeⅡにあたります。
このフィルムは非常に微粒子なのでシャープで解像力が高いという特性を持っていました。
その為、商品撮影を行う広告カメラマンには人気が高かったです。
特にコダワリがある、巨匠ほど使っていたイメージがあります。
まとめ
フィルムというのはメーカーが何十年もかけて色を決めてきたものなので、その色にはとても大きな意味があります。
その上、ぼくらはその色を見て育ってきているので記憶色的にイメージが刻み込まれています。
そのイメージに合わせて色を考えることができれば、その色表現は正しいのか間違っているのか直ぐにわかります。
つまり、基準になるということです。
そのことを踏まえて、フィルムの色特性を調べると面白いので、ぜひ知って欲しいですね。
フィルムカメラをこだわって使っている方でリバーサルフィルムを使ったことのない人は一度試して見てください。
フィルムの奥深さと撮影への心づもりを学ぶことができるはずです。
クローゼットから発見されたリバーサルフィルムを使ってみようかなと思っています。
ただ、使用期限を遥か昔に過ぎているので正しい色は出ませんが、それも時間を感じさせて良いですよね。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
読者の皆様がこの記事から何かしらのヒントや情報を得てくださり、少しでもお役に立てたならうれしいです。